小川商会と言えばパッシブサンプラー No.1

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 これまでの技術報告ではフローインジェクション分析(FIA)装置OG-FI-310NOについて説明してきました。そのため,弊社はFIA装置などの分析機器の開発・販売をする会社であろうと思われるかもしれませんが,FIA装置ビジネスに参画したのは筆者が小川商会に入社した約20年前のことであって,そもそも弊社は,知る人ぞ知るパッシブサンプラーを製作して販売するビジネスこそが本業であり40年ほど前からすでに立ちあげていました。本稿を含めて数回に分けて弊社で扱うパッシブサンプラーについて解説して,パッシブサンプラーの理解を深めていただくとともに,もっと多くの皆様方にパッシブサンプラーによる大気成分の測定に興味を持っていただければ幸いです。

そもそもパッシブサンプラーとは何か?

 環境大気中での汚染物質の測定は,地方自冶体が中心となって国内に広く設置している常時監視測定局で,自動測定器により行われています。産業活動の活性化による大都市集中型の大気汚染の形態は,近年の積極的な地域活性化政策や大陸由来の越境汚染に代表されるように,これまで想定していなかった形で地方都市へと地域拡大の様相に推移して,汚染の地域拡大に伴ってこれまでみられなかった局所汚染の傾向も散見されるようになったのが最近のことでした。
 一方,汚染物質の組成も多様化の傾向にあり,複合型汚染が人体に及ぼす影響は,疫学的見地からも非常に重要と認識されています。このような中で,汚染状況の正確な把握は,汚染ルートや汚染機構の解明の観点,及び各段階における的確な対策を講じる上で,まず重要なステップとなります。国や地方自治体が管理する自動測定器による測定では,1時間ごとの連続的な大気汚染物質の濃度は得られますが,電源確保や費用などの問題から任意の場所で広域的な測定や山間部での測定は困難です。
 このような状況下で注目されてきたのがパッシブサンプラーを用いる大気汚染物質の測定でした。自動測定器のような時間分解能の高い測定値は得られませんが,パッシブサンプラーそのものは電源を必要とせず,小型・軽量で,取り扱いが比較的簡便で安価なために,その機動力を生かすことで,いつでも,いかなる場所でも数多くの任意の場所に設置できて広範囲な測定を可能にするばかりでなく,インフラの万全ではない山間部などでの測定も比較的容易に行えます。

使用例① 自動測定器との併行測定
使用例② 高低差による濃度の違いを調べる

使用例③ 個人曝露量の測定

従って,例えば同じ時間帯に多数の地点で測定を行うことができるという利点が発現し,測定を「点」から「線」,「面」,さらには空間的にその機能を拡大することができます。また,パッシブサンプラー測定法は汚染濃度の瞬間値を得るのではなく,一定時間内の平均値を求めることができるという特徴を利用すれば,疫学的調査で重要な手段である個人曝露量の把握においても有効に利用できます。さらに,実際に現場で使用されているいくつかのパッシブサンプラーによる大気汚染物質の測定値は,その測定器の特性を十分に理解した上で用いれば,自動測定器による測定値と比較しても測定精度は遜色がないとの評価があります。
 ここに述べたようなパッシブサンプラーを用いることの利点や優位性を理解していただくために,次回は小川商会のパッシブサンプラーについて解説したいと思います。


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